学術
冷房病(クーラー病)とは?~漢方養生で出来る対処法!
寒暖差不調に要注意 暑い日に、欠かせないクーラー。 その結果、室外と大きな寒暖差が生まれ、体温をコントロールする自律神経が乱れてしまうことで起きる体調不良を、冷房病(クーラー病)といいます。 その症状は様々で、寒気、気だるさ、むくみ、冷えや肩こり、のどの痛み、頭痛、腰痛、腹痛、胃痛、下痢、生理痛の悪化、神経痛、顔のほてり、微熱、などがあらわれます。 漢方では、夏の、暑邪(しょじゃ)と湿邪(しつじゃ)に加え、人工的な寒邪(かんじゃ)も加わることで、陰陽バランスが崩れている状態と考えます。 特に、気虚(ききょ)体質の方は、要注意。 身体の構成成分の一つである“気”が不足している状態を、気虚といいます。 気は、身体を動かす、温める、守る、変化に対応する、支える、働きをしています。 冷房病は、変化に対応する力が落ちている状態ですね。 冷房病がきっかけで、梅雨バテ、夏バテ、秋バテと、人によっては11月くらいまで不調が長引く傾向があるので、早くからの対策が必要です。 冷房病に対応!寒暖差に強くなる養生法とは “1日の大半を、冷房が効いた部屋にいる方は、以下の養生法を実践してみましょう! ●3首を冷やさない 手首、足首、首回りを3首といいます。 3首は筋肉や脂肪でコーティングされていないので、寒邪の影響が受けやすい場所になります。 ストールやひざ掛け、靴下などで、冷気から体を守りましょう。 ●入浴で身体をリセット 冷房の影響で、血行が悪くなっています。 シャワーで済ませず、ゆっくり入浴することで身体をリセットします。 好きな香りの入浴剤もいいですね。 ●補気と発汗 身体を温め発散の働きのある、生姜、ネギ、シソ、シナモン、ワサビ、からし、みょうが、など薬味を使って温めましょう。 また、かぼちゃ、にんじん、椎茸、とうもろこし、ナツメ、雑穀、豆類、いも類などは、気を補う食材です。積極的に摂りましょう。 しょうがで「冷房病」対策 “生姜には「ジンゲロール」と呼ばれる辛味成分がたっぷり含まれており、これを加熱や乾燥することでできるのが「ショウガオール」です。 どちらの成分も、血行を良くして、身体の冷えを改善する作用が期待されると考えられています。 ジンゲロール:血液の流れを促進 ショウガオール:深層部から熱を作り出す 生姜を漢方的に分析すると、 ◎発汗作用 身体を温め、発汗することで寒さを散らす。カゼ予防やちょっとした寒気に良い ◎止嘔作用 吐き気、嘔吐に良い。特に冷えからくるものに有効 ◎解毒作用 魚介類、エビ、カニなどの中毒予防および解毒 【夏は生姜、冬は大根で医者いらず】 夏は冷たい物でお腹を冷やしがちなので、生姜で温め胃腸の働きを促進させる、冬は反対に暖房などで体内に熱がこもるので大根で消化を促進させると共に体を適度に冷やすという養生法です。 冬の寒さとカゼ予防でしょうが湯のイメージが強いと思いますが、夏の冷え対策にも効果的ですね。一番身近な薬味です。意識して活用しましょう。 しょうが湯を作って、いろいろアレンジして楽しみましょう。 【準備】 しょうが・・・100g よく洗って、皮ごと薄切りにします。ザルなどに並べて天日干しで水分を飛ばします。 天日干しの前に、キッチンペーパーを敷き、ラップをせずに電子レンジ(500W)で5分加熱してもいいです。 【アレンジ】 ・しょうがスライス2切れを細かく刻み、お湯を150ml注ぎます。 お好みによりはちみつやオリゴ糖を加えます。
この時期、肌が荒れるのには理由がある!
春の陽気と共に多くなるお悩みの一つが、ニキビ(吹出物)です。 なぜ春に症状が多く出るのでしょうか? 春になり暖かくなると、動植物すべてが活動をし始めます。 春に春一番が吹くように漢方では、風邪(ふうじゃ)の影響をうける時期と考えます。 冬の間は、運動量が低く巡りが悪くなるために、身体には老廃物がたまりがちになります。 解毒が上手くできていればいいのですが、できていないと風邪(ふうじゃ)により老廃物が、上半身の外側に押し出されると考えてみましょう。 これが、ニキビが出やすい原因の一つと考えられます。 風邪により影響を受けるのが、五臓の肝(かん)になります。 肝が乱れると、自律神経やホルモンバランスなど、身体のリズムが崩れ、症状が日によって移り変わりやすくムラが出てきます。イライラして怒りっぽくなったり、目や爪のトラブル、こむら返りなどが起こりやすくなります。 老廃物を皮膚からではなく、きちんと解毒すること、五臓の肝を整えることがポイントになりますね。 ニキビでよく使用する漢方薬を紹介します。 ●清上防風湯(せいじょうぼうふうとう) 体力中等度以上で、赤ら顔で、ときにのぼせがあるものの次の諸症:にきび、顔面・頭部の湿疹・皮膚炎、あかはな(酒さ鼻) ●荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう) 体力中等度以上で、皮膚の色が浅黒く、ときに手足の裏に脂汗をかきやすく腹壁が緊張している ものの次の諸症:蓄膿症(副鼻腔炎) 慢性鼻炎 慢性扁桃炎 にきび ※ここで紹介した漢方薬は、あくまでも代表的なものなので参考してください。実際利用する場合はきちんと相談してくださいね。 肝を整え解毒し、風邪(ふうじゃ)対策 ◎肝の高ぶりを抑え解毒する □春が旬の食材の苦みや香りは、肝の高ぶりを鎮め精神を安定させ解毒を促します。 苦み・・タラの芽、ウド、フキノトウ、菜の花タケノコ、ワラビ、菊花 香り・・セロリ、三つ葉、パクチー、シソの葉、陳皮、柑橘類 □食べない時間を多く作り胃腸をいたわりましょう。特に夕食を少なめにし、寝るときには空腹状態であることを心がけましょう。 □夜に、甘い物・辛い物・油っこい物を控えましょう。夜に食べると身体に熱がこもりやすくなります。 □ストレッチなどで身体を伸ばして気を巡らせます。特に脇を伸ばしてみましょう。 □リズムを整えるのが大切です。朝起きる時間は一定にします。ウォーキングなど単純な繰り返し運動もおススメです。 ◎風邪を追い払う □急に薄着になるのはよくありません。特に下半身は冷やさないように心がけましょう。 どくだみ茶で毒出し! 熱を冷まし解毒するお茶としては、ドクダミやハブ茶、ごぼう茶などいろいろあります。ここでは日本の民間薬として有名などくだみについて紹介します。 どくだみを中国語では‟魚腥草(ぎょせいそう)“、英語では‟fish mint”など、魚にちなんだ名前がついているように、強い臭気があるのが特徴です。 どくだみの臭いは乾燥すると変化するため、お茶は飲みやすく健康茶として人気があります。 働きは ●清熱解毒(せいねつげどく) ●排膿、利尿(はいのう、りにょう) 皮膚の炎症や膀胱炎などによく使われます。 どくだみは、医薬品名を「十薬(じゅうやく)」といい、日本薬局方にも収載されているれっきとした生薬です。 薬局では、「便秘がちで吹出物の気になる方に」とパッケージにも書かれています。 手に入りやすい健康茶なので是非お試しください。 どくだみが入っているブレント茶も販売されています。ティーパックになっていて取り入れやすい商品もありますので、探してみてくださいね。
寝コリを漢方で考えると・・
寝ると疲れが取れて、朝はスッキリ目が覚める!はずなのに・・・ 朝起きると身体がバキバキで、肩や背中が凝っていた経験はありませんか? このような状態を、「寝コリ」と言います。 「寝コリ」が生じやすくなっている時の未病サインはこちら! しっかり寝たのにとても眠い 朝起きてしばらく、首、肩、背中に違和感や痛みがあり動いているうちに軽減する 寝てはいるが夢が多く、寝た気がしない 歯ぎしりや食いしばりをしている 枕や布団がしっくりこない 寝ている時に寒さを感じる 寝る寸前までスマホを見ている 寝返りが少ない 寝コリを漢方では、五臓の肝(かん)と心(しん)が興奮して神経が休まらない状態と考えます。 ストレスによるイライラや緊張状態が続くと、肝火、心火になりやすくなります。 舌を見てみましょう。 舌先から外側が赤くなっている人ほど、肝火心火の状態かもしれませんよ。 また、肝と心は、どちらも血(けつ)との関係が深い五臓です。 血の不足は、栄養が行き届かなくなると同時に、精神活動にも影響を与え、さらに血行が悪くなることで、身体がバキバキになりやすくなります。 質の良い睡眠をとるためにも、肝と心を落ち着かせ、血を整えることが大切になりますね。 寝コリ解消!睡眠の質を良くする養生法 ●スワイショウ(腕ふり健康法)でリラックス 上実下虚(じょうじつげきょ)を上虚下実(じょうきょげじつ)にする方法です。 上実とは、神経が高ぶり興奮している状態。 一日の終わりに4~5分行うことで上半身の高ぶりを和らげることができますよ。 自然体で立ち、腕を前後に振るだけの簡単養生法です。 ●特に肩回りを中心にストレッチ 肩から肩甲骨にかけて念入りにほぐしましょう。 1,背筋を伸ばし姿勢を良くした状態で、両手のひらを肩に置きましょう。 2,その状態で両肘を肩の高さまで上げます。 3,肘で大きな円を描くようにゆっくり5回~10回、回しましょう。 4,逆回りでも同じようにゆっくり回します。 これを、朝や夜、デスクワークの合間などにすると効果的です。 ●寝る前の時間が大切。1日のケアをしましょう ゆっくりお風呂に入った後は、部屋の電気は暗めにします。 なるべくスマホやTVなど目を使うことは避けましょう。 好きな香りを嗅いだり、好きな音楽を聞いたり、リラックスを心がけます。 枕の高さをタオルで調節してベストを探すのもいいですね。 おススメの代表的な漢方薬を紹介しましょう。 【抑肝散加陳皮半夏】 体力中等度をめやすとして、やや消化器が弱く、神経がたかぶり、怒りやすい、イライ ラなどがあるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症(神経過敏)、更年期障害、血の道症、歯ぎしり 【芍薬甘草湯】 体力に関わらず使用でき、筋肉の急激なけいれんを伴う痛みのあるものの次の諸症:こむらがえり、筋肉のけいれん、腹痛、腰痛 ※ここで紹介した漢方薬は、あくまでも代表的なものです。実際利用する場合は、専門薬局に相談してご購入ください。 ウコンで「寝コリ」対策 ウコンと言えば、飲む前に飲む!イメージが定着していますね。 ターメリックともよばれ、成分のクルクミンには、抗酸化作用や抗炎症作用があり、 カレーやたくあんの色付けにも利用されています。 漢方では、 ◎活血止痛(かっけつしつう) : 血行を良くし痛みを止める ◎行気解鬱(こうきかいうつ) : 気を巡らし鬱々とした状態をとる 多量の摂取はおススメしません。 パウダーをいろいろな料理に、ちょっと一振りを心がけるのがおススメです。 こんな活用法もあります。 ターメリックライス […]
夏の体調不良は胃バテからきているかも?
暑い日が続いていますね。 例年より、日中の日差しが強くなっていると感じているのは、私だけではないと思います。 熱中症の予防で、水分を普段より多めにとって、冷房を上手に使ってはいるものの、 □水分をとると胃が重くなって体が重い □いつもより食欲がない □寝ているとこみあげてくる時がある □軟便気味でだるい □胃もたれが気になる □舌に苔が多くついている などの症状が気になっていませんか? 気になる症状が多い方ほど、胃バテになっている可能性が高いです。 私は寝てもなんとなくだるさが残り、間違って口の中を噛んでしまった場所が口内炎になってしまい、なかなか治りません・・。 冷たいものを多くとってしまうこの季節。 胃の負担は想像以上です。 胃のケアを心がけることが、夏バテ、秋バテ対策にもつながるので意識して取り組んでいきましょう。 胃バテにオススメ!養生法 胃は、冷えと湿気が大嫌いです。冷やさないことと、停滞させない工夫が必要になります。 ●薬味、香辛料を活用しましょう! そうめんや冷奴に、生姜やネギ、みょうが 冷やし中華に、からしやお酢 お刺身に、わさび、シソ、生姜 鰻に、山椒 餃子に、お酢と胡椒 他にも、ウイキョウ、クミン、シナモンなどのスパイスは、健胃作用があり胃を温めます。 私は、小さいときから「お腹だけは冷やすな、いくら暑くてもタオルケットはお腹にあてて寝なさい!」と言われてきました。 中からだけではなく、外からのケアも必要ですね。 ●足三里(あしさんり)のツボ 足のむくみ、疲労回復、だるさ、消化不良などにオススメのツボです。 足の外側、膝の下のくぼみから指の幅4本分下がったところが足三里のツボです。 棒などで、足の外側を上下に動かしてもいいですね。 痛気持ちいいところを念入りにほぐしましょう。 ●冷たいものの後には温かいものでバランスをとる 外にいるときや、外から帰ってきたときは冷たいものでクールダウンは必要です。 2杯目からは、常温の飲料が良いでしょう。 特にお腹が弱い人は、冷たいものの後は、白湯などの温かいものを少し飲むと胃バテ対策になります。 山査子で消化力アップ! バラ科サンザシの果実である山査子は、漢方薬の原料としても使われています。 食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富に含まれています。 五味:甘、散 五性:温 帰経:肝、脾胃 消食、化瘀、理気、開胃 山査子には、消食=消化を導く働きがあります。 特に肉料理など脂っこいものの消化を促進します。瘀血体質(おけつたいしつー血行不良)に有効で、コレストロールや中性脂肪、血圧にも良いとされるので、肉の食べ過ぎでドロドロ血になっている人には特におススメです。 また、酸味に少し甘味があるので、身体の消耗を減らし、潤いづくりもしてくれます。 夏の胃バテには、もってこいの素材です。 私は、山査子の乾燥したものを持っているので、お茶の素材として使っています。 紅茶、ルイボスティ、ハイビスカス、プーアル茶、などと相性が良く、トッピングしています。 そこに、 気だるく消化が悪いときは、陳皮(みかんの皮) 疲れがひどいときは、ナツメ 目の疲れがひどいときは、クコの実 をさらにトッピングしてブレンド茶を楽しんでいます。 お菓子になっている山査子のスティックが多く出回っていますね。 それを、お肉を食べた後のデザートにするのもおススメです。 […]
女性のからだは7年周期、頑張る女性のからだと漢方アンチエイジング
女性向けの特集でよく使われるキーワードが「女性ホルモン」。この春で42歳の節目を向かえる私も、この言葉を表紙に使った雑誌はつい手に取ってしまいます。 漢方では、「女性の身体は7の倍数で変化する」と捉えます。女性ホルモンのピークは28歳。その後は緩やかに減少し35歳になると痩せにくくなり、肌のくすみやたるみが気になって白髪も増えてきます。さらに42歳になると、肌のたるみにより顔の輪郭が変わり、シミ、しわなども…。女性ホルモンの減るスピードには個人差があるから、これはあくまで目安。40歳を越えても美しく輝く女性もいれば、20代だというのに老化を感じる若者もいます。 30歳のある日、タイのバンコクでタイマッサージを受けたら、突然後頭部を針で刺したような刺激を感じてびっくりしました。何事かと思ったら、マッサージ師の女性が白髪を一気に3本も抜いてくれたのです。「知らない間に白髪がそんなに…。ついに老化が始まったか」とショックを受けつつ、さらに立て続けに30本ほどサービスで抜いてもらいました。白髪が増えるというのは、女性ホルモンが減ってきたサイン。 漢方で生理や妊娠、老化に深い関わりを持つ機能を五臓(ごぞう)の「腎(じん)」と言います。成長や発育、生殖などの役割もあり、女性ホルモンもそのひとつ。腎を元気に保つには、全身に栄養を運ぶ役割を持つ「血(けつ)」の働きも欠かせません。血が充分にあれば、腎は元気に働くことができ、生理は順調で、妊娠力もあがり、老化も遅くなります。血が不足し腎が弱ると白髪や抜け毛、骨や歯のトラブル、耳鳴りや難聴などの症状に繋がります。無月経や経血量が少ないなども血が不足しているサイン。 実は私、老化が早い体質。20代の生活習慣がさらに老化を加速させていたことを30歳超えてから気がつきました。「今、気がついた!」というあなたでも遅くはありません。今日からできることがあります。身体は、寝ている間に汚れた血をキレイに浄化し、新しい血を作り出して身体のメンテナンスをしています。ゴールデンタイムである22時から2時頃に熟睡していれば、血が増えて内臓は元気になり、肌も張りや潤いが増し、透明感がでてきます。逆に夜更かしは血を減らし、老化を早めます。平日は仕事が忙しくてどうしても早く寝られないという方は、休みの日だけでも今より30分早く寝てみましょう。きっと変化はありますよ。
排尿トラブル(頻尿)と心のつながり ~清心蓮子飲
排尿トラブルというと、頻尿や残尿感など誰もが経験する症状や、尿失禁や膀胱炎、排尿困難など特定の時に起こるものなどさまざまです。多くの方は、腎臓や膀胱にトラブルがあると考えるでしょう。事実、漢方でもそのようにとらえます。 五行配当表というものをご存知ですか?自然界にある5つの要素が互いに関連していることを示す表で、さまざまなヒントがつまっています。 五行 木 火 土 金 水 五臓 肝 心 脾 肺 腎 五腑 胆 小腸 胃 大腸 膀胱 五季 春 夏 土用 秋 冬 五気 風 熱 湿 燥 寒 これによれば腎は水の性質を持ち、膀胱と協力して体内の水分代謝を担っていると考えます。寒い冬に排尿トラブルが起こることも、この表からわかります。腰痛や冷えになりやすい高齢の方や、寒がりで冷え性の女性が頻尿になるのも納得がいきます。 では不安など心の状態が頻尿につながるとはどういうことなのでしょう?あるお客様から次のようなご相談を受けたことがあります。 「25歳の姪が急に頻尿になって、母親から困っていると相談された。日中はひどいと30分おきにトイレに行き、夜は1~2時間おきにトイレに起きて休めていないよう。今までこれといった病気をしたこともなく、病院でも泌尿器に異常はないと言われたらしい。」 「姪御さんは最近、環境や心境の大きな変化はありませんでしたか?」と尋ねたところ、実はお父様が急逝されてその四十九日を終えた頃から症状が出ているということがわかりました。 実はこのような時、漢方薬で腎や膀胱に直接アプローチしても改善はみられません。全く関係ないようにみえる心にアプローチするのです。心身は互いに協力したり、コントロールしてベストな状態を保っています。先に出てきた五行・五臓も同じです。 この方の場合、お父様が急逝されたことで大きな不安が心に生じてしまいました。この不安は火として身体を傷めていきます。この傷は腎にもおよびます。火が強すぎて水が蒸発し、うまく巡らなくなってしまったと考えるのです。 このような時に効果を発揮するのが清心蓮子飲(せいしんれんしいん)という漢方薬です。「清心」とは「心に生じた火をさます」ということです。「蓮子」とはハスの実のこと。ハスの実は薬膳でもよく不眠や不安がある時に食されます。 姪御さんは清心蓮子飲を2週間ほど服用しました。心に生じた火が小さくなれば水がしっかり巡るようになるので、悩まされている頻尿も解消して眠れるようにもなったそうです。 自分が感じている以上に身体は正直です。身体が教えてくれるサインを見逃さずに適切対処したいですね。 次回は、漢方の処方名と季節・方角のつながりをご紹介します。
みえない不快な塊を解消する? ~半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
『漢方ライフ』愛読者の皆さま、こんにちは。漢方スクールで講師をしている薬剤師の齋藤です。 店舗での漢方相談の経験をもとに、身近な症状と漢方薬の不思議な関係をご紹介します。 漢方薬を知ることで、ご自身の健康について考える機会になれば幸いです。 皆さんは「気」のつく言葉をいくつあげられますか? 元気、やる気、気温、天気、気持ちなど、たくさんありますね。この「気」、漢方では人体の構成成分であり、生命エネルギーであると考えます。健康な時には「気」が満ちていて、スムーズにめぐっていますが、ストレスや悩みなどの感情変化や、生活リズムの乱れなどがあると、すぐに固まってしまいます。 今回は、そんな「気」の塊のお話です。 実際にご相談のあったお客様ですが、最初は食事がのどを通らないという感じから始まりました。ご主人の両親と同居が始まり、いろいろ気遣いして疲れているからかな?と思ったそうです。けれど、しばらくするうちに、のどに塊が詰まっているように感じ、唾を飲みこむのもつらく、歯を磨くときにも塊が上がってくるようで気持ちが悪くなってしまうようになりました。のどにポリープでもできたのかと、慌てて耳鼻咽喉科にかかり、レントゲンを撮り、内視鏡でも検査をしましたが何も出てきません。 医者からは「何もないので様子をみましょう」と言われてしまい、藁にもすがる思いで漢方相談に来られました。お話を聞くうちに、お客様がとても頑張り屋さんで、職場でも家庭でもいろいろなことを見事にこなしていることがわかりました。 私は素直にすごいなあと思い、「○○さん、本当に頑張っているのですね。でも時々ため息をついてあげたほうがいいですよ。」とお伝えしたのです。すると、ひとつため息をついた後に、堰を切ったように泣き始めました。よほど詰まっていたのでしょう…